〜 たった一つの願い 〜



うん……いい風。
見上げれば真っ黒なキャンバスに白い点が散らばっている。
周りは真っ暗で何も見えないけれど、多分、誰も居ない。
周りの草だけがザワザワと楽しそうに話をしている。

今日は一人でお散歩。
夜に……それも一人でなんて怖いな、って思ったけど……
気持ちのいい風に誘われて……出てきちゃった。
一応、貴兄の部屋の前に
「おさんぽにいってきます」
って紙に書いて、置いてきたから大丈夫……だよね。

本当は貴兄と一緒に来られたなら……。
今よりもっと嬉しくて、
今よりもっと楽しくて、
今よりもっと安心で、
今よりもっと心地よくて、
今よりもっと幸せにしてくれる。

でも、なんだかとっても忙しそうだったから……迷惑かけちゃいけないなって……。

そんなことを考えながら真っ黒なキャンバスをただ静かに眺めていたの。
どれだけの時間、眺めていたのかは解らない。

あれ、来ないかなぁ……。
そう思った矢先、シューっと白い点が一つ左から右へと走り抜けたの。

あまりにもビックリしちゃって、願い事……三回どころか何も言えなかった。
もう……いくら来たらいいなって思ったからって……
もう少しタイミングってものがあるでしょ!!
こうなったら……もう一度来るまで待っちゃうんだから!!

でも、それからどれだけ待っても真っ黒なキャンバスには真っ白な点がキラキラと光っているだけ。

ここに来てからどれだけ時間が経ったんだろう。
もう……帰ろうかなぁ。
だけど……帰ったすぐ後に来たら……嫌だな。
そう思ってたら帰るに帰れなくなっちゃった。

そうしていたら突然、頬にぽたって冷たい何かが落ちてきたの。
もしかして……雨、降ってきちゃったの?
どうしよう!!
傘なんて……持って来てない!!

とりあえず近くの大きな木の下まで走ってきたけれど……。
このままじゃ……帰れない。
雨でずぶ濡れになって帰ったんじゃあ、貴兄に迷惑が……。
やっぱり一人で外になんて出なければ良かった。
このまま一人は……嫌。
だからって貴兄を困らせるのは……もっと嫌。
でも……このまま帰らなかったら心配……するよね。
帰っても帰らなくても貴兄を困らせる私……悪い子でゴメンナサイ!!

その時、雨音に混ざって声が聞こえたの。

「紫翠ちゃーん!!いたら返事してー!!」

あれは……貴兄の声!?
私はすぐに返事を……することができなかったの。
結局……迷惑、かけちゃってるって事に気が付いたから。
そんな私の俯いた顔を見つけた貴兄は……
ゆっくり歩いてきて、私の前でしゃがみこんで……

「さぁ、一緒に帰ろう。」

貴兄はいつも優しい。
私が服の裾をぎゅってしても、
外を歩いていて転んじゃっても、
ついワガママを言っちゃった時も、
時々は怒る時もあるけれど、
いつも笑って許してくれて、助けてくれる。

「ごめん……なさい」
泣きそうなのをグッと堪えて言ったら、

「ミルクティ、缶のやつなんだけど……飲む?」

なぜだかどうにも我慢出来なくなって……ちょっとだけ泣いちゃった。
でも、貴兄には「雨で少し濡れちゃってるだけだから!!」って誤魔化しちゃった。

そして二人が一つの大きな傘に入って帰り道。
手を繋いで歩いていたら、もうすぐ家の前、ってところで貴兄は傘を閉じたの。
あ……雨、もう止んだんだ……。

「あっ……流れ星。」
「二つ並んで流れるなんて…凄いや。」

しん、と静まり返った空に二筋の流れ星。
お願いはまたできなかったけど……いいの。
二つの寄り添って流れる流れ星はまるで…………貴兄と私みたいだったから。

貴兄…こんな私だけど……一番近くに……いさせて。
ずっと、ずっと♥

それが私の……たった一つの願い。



〜 Fin 〜
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