〜 離さないから 〜



「明日の空もようは雲ひとつなく、暖かい一日になるでしょう。」

明日は貴兄と二人でピクニックに行きます♥
行き先はすぐそばの公園。

「せっかくだからどこか遠くまで行こうか?」

貴兄はそう言ってくれたけど、私は近くがいいって言ったの。
だって……遠くだと着くまでに時間がかかっちゃうでしょ?
それに……知らない所に行くのはちょっと……怖いもん。
近くだったら道だって知ってるし、ちょっとだけなら遅れちゃっても大丈夫……だよね?

でも……でもね……それで近くにしたわけじゃないんだよ。
……本当だよ?
遠くに行くなら、朝早く家を出なくちゃいけないから……お弁当を用意するの、大変なんだもん。
目覚ましがピピッって鳴れば朝早くでも起きられるけど……
あ……ドキドキしちゃって寝られないかなぁ♥

慌てちゃうと私、失敗ばっかりなんだもん……。
お裁縫は袖先まで縫っちゃって手が通せなくなっちゃったし、
お掃除はすればするほど汚くなっちゃって……どうしようもなくなっちゃった。
お布団を干そうとした時もよいしょ、よいしょって運んだのにベランダからそのまま落っことしちゃった。
たしか落っこちちゃった所に貴兄が偶然いて……お布団被っちゃったんだっけ。
あの時は可笑しくて……笑っちゃった。
だって、私のお布団被ったままで「こんにちは。通りすがりのオバケです。」って来るんだもの。
お外はとっても明るかったからオバケがくるわけなんてなかったのにね。

本当は行き先はどこでもいいの。
貴兄と一緒なら……どこだって。
でも、お弁当だけは美味しいのを作ってあげたいから……。

「無理しないで、外で買ってもいいんだよ?」

前にそう言ってくれた事もあったけど、これだけは譲れないの。
貴兄の大好きなものをいっぱい詰めたランチボックス。
それと甘い、甘いミルクティの入った大きな銀色の水筒。
一緒にお出かけする時は必ず用意していくの。
だって……貴兄の「美味しい」って一言、それだけでとっても嬉しいんだもん♥

さぁ、今日は早めに寝ようっと。
目覚ましを忘れずにセットして、ね♥



「チュン…チュンチュン……」

う、うーん。……朝、だよね。
約束の時間までは十分……ある。
さぁ、張り切ってお弁当作らなくちゃ!!

お弁当はサンドイッチにしたの。
タマゴサンドにカツサンド、ポテトサンドにBLTサンド。
ランチボックスいっぱいに並んだ色とりどりのサンドイッチ。
後はミルクティを水筒に入れて……でーきたっ!!
慌てなければ……何でも……できちゃうんだから♥

時間も……ピッタリ♪
出来たばかりのお弁当を持って急いで靴を履いて……。
貴兄の元へ……。

公園までは歩いて10分ぐらい。
二人でお話ししながら歩いたらすぐ着いちゃう。
時間はいっぱいあるから、最初は少し遊ぶ事にしたの。
すべり台を二人で一緒にすべったり、
ブランコを押してもらったり、
シーソーに乗ったりしたの。
砂場ではトンネルを作ろうとしたけど、いつの間にか棒倒しになっちゃってた。
鉄棒は……ちょっと高いから……手が届かなかったの。
だけど……精一杯むーってしてたら……貴兄は抱っこしてくれて……。
ちょっと恥ずかしかったけど……嬉しかった♥

そんな時、ふとベンチの下にタンポポが咲いてるのを見つけたの。
ふわふわの綿毛の付いた、白いタンポポ。

タンポポってとってもすごいと思う。
根を地中深くに張って、どんなに踏まれてもくじけない。
やがて、きれいな黄色い花を咲かせるの。
それからしばらくすると、こうやってたくさん綿毛を付けて、
風が吹いたら……一人でふわふわどこか遠くに旅に出るの。
たった一人で……見知らぬどこかへ。
そして、たどり着いた先でまた静かに根を張るの。

いつもタンポポは一人。
きっと寂しい……よね。
頑張って、頑張って綿毛を付けても風が吹いたら永遠の……お別れ。
また……知らないどこかで……一人ぼっちなんだもの。
それでもタンポポは根を張って……頑張るの。
ほんのわずかな間でも……たくさんの綿毛が付く、その時まで。

「そろそろお弁当にしようよー」

私はタンポポのように強くはないし、寂しいのには耐えられない。
だけど、私は一人じゃない。
私には……大好きな貴兄がいる。
ちょっとやそっとじゃふわふわって飛んで行ったりしないから大丈夫なの。

「このサンドイッチ、すごく美味しいよ。」

もし……飛んで行っちゃいそうになっても……袖をぎゅってして……離さないもん♥




〜 Fin 〜
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