〜 ケ−キとワルツと月明かり 〜



「…………相変わらず……騒がしいな……。」

数日前から引っ切り無しに……右へ左へと走り回るものばかり…………。
いくら師走とはいっても…………
もう少し静かにできないのか……
これでは………………落ち着いて眠れないでは……ないか…………
外は少しづつ…………重く……静かな空が…………
やってきたというのに…………

「そこまで…………大事でもないだろうに……。」

背伸びをして……他より少し高い位置にあるドアノブを引くと………………
そこは……ダンスホール…………。
普段……私はこの場所には近寄らない…………
それでも……都合上…………居なければならないこともあるのだが…………
今はまだ……早い時間だからだろう…………
さほどの人の姿は見えないが……………………
これだけ広い場所となると…………かなりの人数が集まる事になる………………。
また……………………
作り笑顔でやり過ごさなければならないと思うと……
今から疲れてきたな…………。
…………あまり気は向かないが……仕方がない………………
パーティドレスに着替えて…………ミルクティを一口……
別に急ぐ事も慌てる事もない………………面倒なだけだからな……
最悪でも……誰かが来るだろう…………そう思って私は……
ゆっくりと目を閉じた………………。



目が覚めてすぐ…………窓の外を見て……驚いた…………。
もうすっかり………………陽は落ちていて……
息を切らせながら大きなドアを引くと…………
「ハッピーバースデー!!」
待ち構えていた大勢の人波に飲み込まれ……驚いている暇もなく…………
鳥籠に追い込まれる鳥のように指定席へと運ばれていくと………………
元々高いはずの天井にさえ届いてしまいそうなほどの大きなケーキが運び込まれ……
急かされるままにロウソクの火を吹き消せば………………
ホールに流れている音楽をかき消すほどに大きな拍手に囲まれる…………
案の定………………純粋無垢な子供の顔をして……
誘われるがままに手を引かれては1曲……また1曲………………
もう少し眠っていても……………………大丈夫だったか…………。

しばらくすると子供の相手に飽き始めた大人は落ち着きを取り戻し……
私が歩き回ろうともさほど気にされなくなった頃…………
呆れるほどに大勢の人の間をすり抜けて………………
比較的人の少ない辺りまで来てみたら…………
壁際に並べられた椅子に……見慣れた顔が………………1つ。
大きく深呼吸を一つ……息を整えると…………
見慣れた顔の側まで静かに近寄った……………………

「まだ……眠るには早いぞ…………さっさと起きないか……………………バカ。」

その椅子は休憩所じゃないぞ…………全く……
そこは……………………。
寝惚けまなこのその手を引くと………………
誰も居ないベランダへと連れ出した………………

「1曲……………………そ……その……付き合って…………貰うぞ!!」

踊った事があろうとなかろうと…………
そこで眠っていたのが悪いのだからな………………フフフ。
二人を照らしているのは月と星だけ…………
冷たい空気もなんのその………………
室内からは薄暗くてわかりにくいからな……
盛大に失敗してくれても…………構わないぞ…………
ただし……………………私に恥をかかせようものなら……
それ相応の罰は受けてもらうからな……覚悟しておけ…………。





楽しい時間はあっという間に過ぎる…………というのは……
あながち間違いではないようだ………………
あれだけたくさんの客人も……今はもう…………殆ど居なくなって……
1曲といいながら……随分踊っていたのだな………………
それなのに……微塵も上達していないというのは…………才能か?
何も今日いきなり呼び出したわけではないのだから……………………
少しぐらい準備しようとか練習して来ようとは……思わなかったのか…………
流石の私も…………ここまでだとは予想できなかったな……
このままでは………………3日後のパーティで困るぞ…………
ん……………………そうだ……まだその話はしていなかったな…………

3日後…………つまり……その………………クリスマス……だな……
また……………………今日のようなパーティをする……
その時に…………メインイベント……というべきなのだろうか……
私が………………踊らなければならなくなったのだが…………

「相手は私が自分で決める!!」

何の考えもなしにはっきり言い切ってやったのだが……………………。
まさか…………私がエスコートする羽目になるとは………………
客の人数は今日の比じゃないからな…………恥を晒すわけにはいかない……
本当なら今日が練習のつもりだったのだが…………
こうなったら予定変更だ……………………
本番までの3日で1曲…………完璧にマスターしてもらうしか……ないな。
先に言っておくが………………拒否権は…………無いからな。
安心しろ……食事と寝る場所ならあり余ってるぐらいだ……
心配する事など……………………何もない。

…………。
つまらない話はここまでにしよう……
そこで座って待っていろ…………
ケーキと……ミルクティを持ってくる…………ティータイムにしよう。
先程の大きなケーキとは違う………………私が作ったケーキだからな……
不味いかも知れないが……気にするな………………。
随分と冷え込んできたからな…………もしかしたら……
空からプレゼントが降ってくるかも知れないから……………………な。
どうせ…………プレゼントなんて用意している暇など……なかったのだろう?
……………………緊張してガチガチだったのだろうからな…………。
まぁ………………いい。
プレゼントは物でなければいけないとは…………聞いた覚えはないからな……
期待して……残り少ない今日という時間に…………
……………………待つことにしようでは…………ないか♥




〜 Fin 〜
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