〜 誰よりも私らしく 〜



もうすぐ……あの日がやって来る…………
誰が決めたか忘れたが……
実に……不思議なものだな……
務めでも……義務でもない……ましてや命に関わるものでもないと言うのに……
………………どうして……だろうな。

最初は……ただの……作業だったのに……
周りに合わせて……自分も同じように体裁だけでも整えれば……
それはもう……バカが付くぐらい…………
律儀に走り回る……貴兄の姿が見れたからな……
思えば……そんなほんの一瞬でさえ……
待ち遠しくて…………仕方なかった……のか。

それが……幾度も繰り返され…………
今では……こうして……
小さな楽しみの為だけに……
大きな悩みを抱えることになろうとは…………
誰が……どうして……分かっただろうか……。

……本来ならば…………いや……みんなは………………
口裏を合わせたかのように……言うだろうな…………
一番大事なのは……「モノの価値より込めるものの重さ」だと……
そんなことは……………………分かっている…………
…………だが……それだけでは…………足りない。
どれだけ大事だとしても……
その対価に……他のものはどうでもいいのだろうか…………
重箱の隅をつつくようだが…………納得がいかない……
それに………………
……何か……違う…………
具体的には……分からない…………
だけど……………………。

…………とはいえ……考えがないわけではない……
シナモン……ミント……オレンジピール……キャラメルフレーバー……
材料だけなら……下手な店より無駄に……それも豊富にあるからな……
納得がいくまで……いくらでも作り直せばいい…………
面倒ではあるが…………
好みの味を試行錯誤して作るのは……嫌いじゃ…………ない……
種類……分量…………時間……
この世にただ一つ……
私と……………………貴兄だけの味……
手間をかけるには……悪くない…………理由では……ある。




…………。
……………………疲れた。
意気込んだはいいが……まさか…………
冷蔵庫に収まりきらないとは……考えてなかったな……。
まぁいい……まだまだ…………策はある……
足早に……書庫に向かうと……
何が足りないのかを……探すことにしよう…………
幸か不幸か……専門的な本から……くだらない本まで……
調べ物から暇潰しと……何をするにも困らないほどに物量だけはある……
何を探せばいいのか分からずとも……これだけあるならば……
きっと…………手がかりの一つでも見つかるだろう……
……確証のない自信と共に……眠ってしまったことに気が付いたのは……
時間だけが……マイペースに過ぎた後だったが…………な……
どうもこの場所は……心地良すぎて……良くない…………
仕方がない…………気は進まないが……外に出るとするか……

……しかし…………外といっても…………
私が知っているのは……全くと言っていいほどない…………
いつも……貴兄の袖を引っ張って……
引かれるままに行くだけ……
店に行くのも……無駄に長いだけの面倒な車に押し込められて……
一人で行ったことなど…………なかったな……
ふむ……………………面倒になってきたな……
なれば……どうしたものか…………
…………。

……うまく事が進まないと…………
こうも簡単に……諦めがつくものなのか……
ミルクティを飲みながら……
賑わいを見せるには少し早い……庭の木々を眺めては……
もどかしさに焦るばかり…………
やはり……全ては気持ちの問題…………なのか……
白いカップから……静かに立ち上る湯気を吹くは……
眠りの吐息か……ため息か………………
ふわりと揺れた……その向こうに……
面白いものが見えて………………
そうだ…………あれを使えば…………きっと…………!!





広い庭の真ん中で……水の出ていない……
寒くなると…………水が凍って……綺麗ではあるのだが……
古い型らしく……凍り付いたり……無理をさせて…………不具合を起こすと……
もう……修理しようにも部品がないらしく…………
すっかり……乾いては…………雪が少し積もるだけの……
物悲しい…………オブジェクトと化した…………。
放っておいても……いずれ風化して……壊れるのなら……
最後に思い切り動かして………………
新しいものに……作り変えればいいだけの話……
そうと決まれば…………話は早い……
今すぐにでも……準備をさせなければ……な。








……あれから……あっという間に日は過ぎて……
とうとうこの日が……やって来た…………
小さなバスケットに……パンや……たくさんのフルーツを入れて……
噴水は……貴兄に届け…………そう言わんばかりに……
水の代わりに……チョコレートをドーム状に振りまいて…………
甘いにおいを漂わせている……
後は……貴兄が来るのを待つばかり……
天気までは……気付きもしなかったが…………
見事なまでに…………快晴だ……
さぁ……ミルクティの準備もできている…………
バレンタインのチョコレート…………少々スケールは大きいが……
思う存分……チョコレートフォンデュを楽しむと…………いい。

誰よりも私らしく……
はっきりとは……まだ分からないが……
何だか少し……温かくなった………………
そんな……気がする…………。

…………そうだ……
来月は三倍返し…………だぞ……
後々悔やむことの無いようにな…………
……フフフ。




〜 Fin 〜
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