〜 私を何処かに連れてった 〜



PM1:40 公園

「あっ、紫翠ちゃん!!」
「……?」
「紫翠ちゃん、上ー!みずだよー!」
「……あ。」
「どうしたの?お散歩?」
「……うん。瑞葵ちゃんは?」
「えーっとね、”さばいばる”の特訓してたの!」
「そう……なんだ。」
「そうだ、紫翠ちゃんもいっしょに”さばいばる”の特訓しようよ!」
「え……あの……その……。」
「そうと決まれば早速みずの秘密の場所にごあんなーい!!」
「あの……私……何も言ってないんだけど……。」
「ちょっと走るけど、みずについてきてねー!」
「あ……う……うん。」

PM2:10 どこかの道の上

「ちょ、ちょっと?どこまで……行くの?」
「とってもとーってもいいトコロ、だよ!」
「それ……もう5回目だよ……。」
「あれ?そうだっけ?でも本当にもうちょっとなの!」
「そっちは……3回目……。」
「気にしたら負け、なの!」
「あうぅ……。」
「ほらほらー!見えてきたのー!」
「こんなところに……森なんて……あったんだ。」
「この森の中にみずの”ひみつきち”があるんだよー!」
「……"ひみつきち"?」
「そうだよ。その”ひみつきち”で”さばいばる”の特訓をするんだよ!」
「あ……そういえば。」
「気をつけないと迷っちゃうからちゃんとみずについてきてね!」
「う……うん。」

PM3:00 森の中のどこか

「……ね、ねぇ?」
「なーにー?」
「”ひみつきち”って……まだ……先?」
「……。」
「あ……あの、瑞葵……ちゃん?」
「てへへ……ごめんね、迷っちゃった。」
「な、なッ!!」
「でも、これはこれで”さばいばる”だね!」
「それどころじゃ……ないよ。」
「だいじょーぶ!そんなに広い森じゃないからそのうち出られるよ。」
「そんな……そのうちって……。」
「さばいばる♪今日はふたりでさばいばる♪」
「…………。」

「あ、タンポポだぁ〜。」
「……うん。」
「葉っぱが付き始めた頃のタンポポの根っこはお茶にできるんだよー。」
「……うん。」
「あ、こっちはクローバーだぁ♪」
「……うん。」
「これは若い芽とか花は食べられる……と思うの。確か本に書いてあったはず。えへへ。」
「……うん。」
「それから、えーっと……。」
「……うん。」
「紫翠ちゃん?」
「……うん。」
「元気?」
「……うん。」
「勇気?」
「……うん?」
「○ンキッキ?」
「……違う。」
「うーん……紫翠ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃない!!」
「!?」
「いきなりこんな所来ちゃって……道もわかんなくなっちゃって……
 ”さばいばる”どころじゃ……ないよ!!」

「……うぅ……うわぁーーん!!」
「……えっ?」
「うわぁーーん!!」
「あ、あの、その……。」
「みずが道に迷わなければよかったのにー!!うわぁーーん!!」
「ど、どうしよう……。そこまで言うつもりじゃ……なかったのに……。」
「うわぁーーん!!」
「えっと、えっと……あ。」
「うわぁーーん!!」
「瑞葵ちゃん……。」
「ひっく……ハンカチ?」
「……うん。
 その……ごめん……なさい。私……。」

「ううん!!悪いのは道に迷ったみずだから!!」
「違うよ!!私が……あんな事言わなければ……。」
「……。」
「……。」
「……あ。」
「……?」
「紫翠ちゃん、手を出して!」
「キャンディ?」
「うん!ポケットに入れておいたの!”ひじょうしょく”ってやつだよ!」
「……ありがとう。」
「1つしかなかったから……あげるの!」
「……いいの?」
「うん!いいの!」
「……でも。」
「いいの!……でも、ちょっとだけ……欲しいかも。」
「それじゃ、これ……。」
「だめだよ!それは紫翠ちゃんが食べて!」
「元々これは瑞葵ちゃんの”ひじょうしょく”だから……。」
「もう紫翠ちゃんのだからみずは我慢するの!」
「だけど……あ。」
「?」
「このキャンディ、小さいのが2個……入ってるよ。」
「えっ、ホント?」
「うん。……ほら。
 これならふたりで1個づつ……食べられるよ。」

「わーい!はんぶんこ、だね!」
「……うん♪
 ……はい、一つ……どうぞ。」

「ありがとう。」
「ちょっと……溶けちゃってるけど……おいしい。」
「うん!みずの大好きなのを”ひじょうしょく”にしたんだよ!
 だからとってもとーってもおいしいんだよ!」

「……♪」
「あれ?あれれ?
 よく見たらココ、歩いたことあるかも?」

「何か……目印はないの?」
「えーっとね、おおきな木に『みずき』って書いてあるの!」
「もしかして……この木じゃない?」
「そう!!それだよ!」
「ずっと近くに……いたんだね。」

PM5:50 ”ひみつきち”の中

「紫翠ちゃーん!大丈夫ー?」
「あまり大丈夫じゃ……ないかも。」
「みずの手に捕まって。引っ張ってあげる!」
「……ありがとう。」
「それじゃ、いっくよー!せーの!!」
「きゃっ!」
「みずの"ひみつきち"に到着〜。」
「すごい……。」
「てへへ〜。ここからだとアレがきれいに見えるんだよ!
「アレって……うわぁー……。」
「夕陽が沈むトコロ、だよ!」
「綺麗……。」
「あっ、でもこれが見えるって事は」
「もう夕方!!帰らなきゃ!!」

PM6:10 帰り道

「急がなきゃ真っ暗になっちゃうよ!」
「……焦って転ばないようにね。」
「ねぇ、紫翠ちゃん。」
「何?」
「またいっしょに”ぼーけん”しようね!!」
「……うん♥
 でも……それ……もう8回目だよ?」

「気にしたら負け、なの!」
「……それは2回目♪」
「てへへ〜♪」




〜 Fin 〜
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